【街の名物】三山の商店街でワーゲンバスを事務所に、ガレージで自転車屋を営むおじさんの話

7/13(木)三山の商店街でワーゲンバスを事務所にガレージで自転車屋を営むおじさんの話
三山の商店街のけやき並木から見えたおじさん

二宮神社から一番近い商店街「三山央町通商店街」のメインストリート「けやき並木」を歩いていると駐車場越しの道に水色のワーゲンバスが見える。バスの前には赤いサロペットを着たおじさんが座っている。

明らかに怪しい雰囲気をかもし出しているこの空間、
看板には「自転車屋」と書いてあるぞ。

「ちょっと、話聞いても良いですか」
と話しかける。

この空きスペースを使って自転車修理屋「Camp」を2年ほど前から始めたのは、
滝澤利行さん(68)だ。

「学生時代はひどい不良少年だったよ」と、
遠い目をしてポツリポツリと話をはじめた・・・

市川学園を卒業して、
そのまま羽田空港で「トーイング」と呼ばれる飛行機を牽引する仕事に就いた。
学歴とか安定とかそういったものには興味がなかったんだ。

 


ただ、自由に生きていたかったんだよ。

この職場に変わった先輩がいたんだ。
滑走路の脇で、離陸する飛行機の撮影を続ける。
毎日撮影するからセミプロのようになった。

「滑走路の近くで写真を撮るなんて、
 いまでは考えられないような事なんだけどね、
 何となく容認されていたんだよね、時代だね」
と、懐かしい記憶の扉を開ける。

ある時、世界最速の音速旅客機「コンコルド」
が来日するって話が舞い込んできた。

プロの写真家でもピタッと機体をすべて枠の中に収めるのは難しい。

そこで、そのセミプロ先輩にお鉢が回ってきた。

そんな先輩を見ていて写真にすごく興味を持ったんだ。

仕事と並行して夜学に通って写真の専門学校を卒業した。

運よく、卒業のタイミングでスタジオに滑り込むことができた。

商品写真や広告写真などの商業写真をメインに何でも撮った。

雑誌社との契約で夏の海ではサーフィン、冬山ではスノーボード。
何か月も泊まり込んで撮りまくった。

夏と冬が交互にやってきてその繰り返しの中で必死で遊んで数年が過ぎていった。

気が付けば、フリーのカメラマンとして30年のキャリアができていたんだ。

ちょうど、デジタルカメラの性能が向上してきて、
素人でもプロ顔負けの写真を撮れるようになった時代。

フォトショップで写真のレタッチ、
イラストレーターで編集なども素人でもできるようになった。

仕事が一つ、二つ、、、と減っていった。
減るに任せて仕事を縮小した。

大きな仕事もみんな若手に引き継いできたよ。

手が空いたので
高校時代から趣味で続けているシンセサイザーに力を注ぐようになった。

MACの編集ソフトが普及して手軽に音楽を作れるようになったんだよね。

仲間と音楽を作って、演奏した。
いろんな音源で作曲もした。

仕事の手が空いた分、趣味に時間を使ったよ。

 

じゃあ、仕事はどうしよう。
ってなるよね当然。

 

子どものころから好きだった自転車いじりを仕事にしようと考えた。

新小岩で生まれ育ったから、
いつでも河川敷に行けば捨てられている自転車があった。

拾い集めてバラバラにして、
寄せ集めのパーツで自分の自転車を作って乗っていたっけな。

 

自転車が好きだった自分を思い出したんだ・・・

大手ショッピングセンター系の自転車会社に61歳で入社した。
定年間近の滑り込みセーフ。

2年まじめに勤務して晴れて「自転車整備士」を取得。
いまは、Campが休みの日にホームセンターの自転車コーナーで整備をしているよ。

自宅ガレージでの自転車屋は、
2年後をめどにグランドオープンする。

「いまは、そのためのプレゼンテーションだ」
と言い張る。

 

「ここに座っていると、
いろんな人が通り掛かる。
あんたの座っているその場所、
そこに座っていろんな話をするんだ。

 ばあさんやおばちゃん、
サラリーマンの男性・・・」

と、
隣に置いた僕の座っているキャンプチェアーを指さす。

遠くからでも目立つように冬は赤いつなぎ。
夏はさすがに暑いからサロペットで個性をアピールしている。


「60歳になったときに奥さんに、
 赤いちゃんちゃんこの代わり
に用意してあげた」

って、赤いつなぎをもらったんだ。

最初は気に入らなかったけど、
着てみると良いもんだよね。

サーフィン撮影のころに知り合った仲間から譲り受けたワーゲンバス。

最初は、
ビートルに乗ってみたけど、
ワーゲンバスに乗り換えたらしっくり馴染んだ。

一回手放したけど、やっぱりこいつだよ。
今は事務所代わりに使ってるんだ。

冬は中に入ってストーブ炊いて、
寒さをしのぎながら営業してるんだ。

「70歳の時に生きていたら、
ここは看板も立派になって、
壁もできててさ。

 ちゃんと自転車屋らしくなっているんだ。
そんなことを考えると毎日が楽しいよ」

店名:自転車修理Camp
住所:船橋市三山8‐23‐3
電話:090‐2227‐5343
営業時間:10時くらい~17時くらい ※日によって。気分によって異なる場合がある
営業日:月水金 ※雨が降ったり、用事があるときは休業
定休日:不定休